豊国男の日記

日常生活の中で、考えついたことを綴ります。テーマは雑多な分野に及びます。

司法試験の問題漏えいについて

司法試験の考査委員を務めていた明治大学法科大学院の教授が、自らの教え子に司法試験の問題を漏えいしていた、という事件が起きました。この教授は、実際に指導を受けた学生の間でも女好きで有名で、学生の扱いでも男子学生と女子学生とではかなり違った対応をしていた、との報道もあります。そのことはさておき、今回のエントリーでは「試験」について考えてみます。

 

こうした事件が起きますと、世間から非難が集中します。理由はもちろんのこと、「試験は公正に行われるべき」との社会通念(というか常識)に反するからです。ましてや、司法試験といえば裁判官・検察官・弁護士という職業に就く人を選ぶための試験です。法曹関係者は、裁判官であれば訴訟の判決を下し、検察官であれば被疑者を起訴し、弁護士であれば法的トラブルを抱えた人の代理人として訴訟を戦います。いずれも、他者の人生に大きな影響を及ぼす職業です。だからこそ、司法試験は「日本で最も難しい試験」の一つであるわけです。

 

少し考えてみてください。司法試験に不正な手段を講じて合格した人に裁判の判決を下されたり、被疑者を起訴されたり、他者の法的トラブルの代理人になられたりしたら、皆様でしたらどう思いますか?とうてい承服できませんよね?今回の事件を起こした教授・教え子の学生とも、法律学を学ぶ最高峰に位置しながら、こうしたごく基本の認識が欠けていたのです。

 

話題は少し変わりまして、司法試験に合格した後のことです。昔であれば、司法試験に合格すれば高収入が保証されました。ところが今や、かなり様相が変化したようです。新聞の折込チラシやテレビのコマーシャルでも、法律事務所の「クレジットカード・ローンの過払い金返還請求引き受けます」という広告をしばしば目にします。私の故郷は、北関東の農村地帯にある小さな市ですが、東京にある法律事務所の「過払い金返還請求引き受けます」というチラシがしばしば入るようです。

 

このような状況になっている理由は、要するに弁護士の仕事がないためです。日本はアメリカのような訴訟社会と違い、何かトラブルが起きても裁判に訴える人は多くありません。そうした社会で司法改革(改悪?)を行い、弁護士の数を増やしたものですから、当然仕事にあぶれる弁護士が増えたわけです。

 

弁護士を目指して司法試験のために猛勉強している人の中で、「私は司法試験に合格して弁護士になったら、多重債務に苦しむ人の債務整理をしたい」と考えているような人は、はたしてどれだけいるのでしょうか?しかし彼らとて、霞を食って生きているわけではありませんから、背に腹はかえられません。結果として、当初の志とはかけ離れた仕事であろうと、生活のためにはやらねばなりません。

 

何か、こう考えてみますと、サラリーマンとあまり変わりありませんよね。法科大学院制度の是非について、かまびすしく議論が起きていますが、猛勉強して司法試験を目指すことの意義も熟考すべきです。法曹の地位も、時代とともに変わるものなんですね。

 

やはり、「安定した職業」などというものは幻想です。